恋心はシェアできない

「あの……」

「ん?」

「今日は連れてきてくれて、本当にありがとう」

ちゃんと目を見て言えたことに心の中で安堵する。

「どういたしまして」

碧生がいつもの口調でそう言うと、すぐに彼は視線を逸らした。

(あれ……なんか……)

私はどことなくいつもの彼と少し違う気がした。

「碧生? どうかした?」

「あー、うん」

碧生が前髪を掻き上げながら眼下に広がる景色に視線を移した。


「……俺、シェアハウスから出ることになったんだよね」

「え……」

急に頭が真っ白になって、アイスティーを持つ手がわずかに震える。


「少し前から異動願い出してて、正式に内示が出た。社内で発表があるのはまだ先だけど」

「そう……なんだ」

「うん。部署が違う翔太郎と梓にはまだ言ってないけど近く『タマコの家』出ることは伝えるつもり」

「異動先って……大阪?」


前に四人で食事をしていた際、碧生が大阪支店の営業本部長から新規事業展開にあたり若手の営業マンを募集中だと聞き、興味があると話していたことを思い出す。


「当たり。実家もこっちだし、悩んだけどやっぱ自分の力試してみたくて」

「……碧生なら、きっと上手くいくよ」

もう少し明るく言いたかったのに少しトーンが暗くなってしまった。