合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜は出来上がった夕食をリビングのローテーブルに運び、ソファーを背に床に正座しながら食べ始めた。なんせこの家にはダイニングテーブルがないからこうするのが一番食べやすいのだ。

 悠磨は、もう三日帰ってない。

 大学病院の外科医が忙しいというのはなんとなく知ってはいたが、悠磨のことだから通常業務に加えて他の仕事も受け入れているのかもしれない。

 彼の帰宅は夜中だったり早朝だったり。鈴菜が仕事に出た後に帰ってきて部屋で寝ていることもあるようだ。同居しているとはいえあまり顔を合わせていない。

 めずらしく夜、早く帰ってきたと思っても、部屋に籠もって資料を確認したり論文を読んでいるようだ。
 一週間くらい前、夜中に喉が渇いて起きた鈴菜がキッチンにいこうと彼の部屋の前を通り過ぎようとしたらたまたま少し開いていたドアから悠磨の姿が見えた。
 彼は両手に長いハサミのようなものを持ち筒の中に入れて動かしていた。おそらく手術のためのトレーニングだろう。

(すごい真剣な顔してたなぁ。でも貴重な睡眠時間削ってまでやって大丈夫なのかな)