合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 不安が募る鈴菜を前に、悠磨は腕組みをやめ、背筋を正した。

「鈴菜」

「は、はいっ」

 つられて鈴菜も背筋を伸ばす。

「俺と結婚してくれないか」

「……はい?」

 整った顔を真正面に見ながら、鈴菜は目を瞬かせた。

(今、結婚してって言われた?……なるほど、冗談ね)

 鈴菜はすぐに理解する。彼と初めて言葉を交わした時、逆の立場で同じことを言い放った覚えがあるから、からかわれているに違いない。

「もう、びっくりするから冗談言うのやめてくださいよ」

 硬い笑顔でやりすごそうとしたが、彼はゆっくり顔を横に振った。

「あいにく冗談じゃない。結婚して一緒に住んでほしい」

「一緒に、住む……?」

(どうしよう、元々何考えてるかよくわからない人だったけど、今が一番わからない……!)

「鈴菜、俺は客観的かつ合理的に考えた」

「えっと、なにをですか?」

 突然始まった話にキョトンとする鈴菜。

「結婚のことだ。そもそも対外的には結婚して離婚する予定だっただろう? だったら同じことを実際にしても問題はなくないか?」

「むしろ問題しかない気がしますが?」