合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

『土谷さん、お忙しい所、今日はありがとうございました』

 なるべく幸せそうな顔を意識して土谷に笑いかけると、彼はなぜか息をのんだ表情でこちらをマジマジと見つめてきた。

『これからも、鈴菜のことを同僚としてよろしくお願いします』

 隣に立つ悠磨の笑顔の圧に押され我に返った土谷は『き、今日は、おめでとうございました』と慌てたように言い残しすぐに立ち去った。

「これで乗り切れそうです。この後は極力ご迷惑を掛けないようにしますので」

(結局いまひとつ掴みどころのない人だったけれど、この先、顔を合わせないと思うとさみしいような)

 悠磨に対してそう感じたのは、短い期間で協力し合って結婚式まで上げた彼に勝手な仲間意識を持っていたからかもしれない。

 しかし実際は彼を一方的に面倒事に巻き込み、協力してもらっただけだ。これでほぼ目的は達成した。鈴菜はこの先悠磨と会うのをやめようと決めていた。きっと彼も同じ気持ちに違いない。

(ムーリット・アリーにも行かない方がいいよね)