合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 やがて彼の大きな掌がウエディングドレスの肩に乗り、ゆっくり顔が近づいてきた。段取りどおり目をつぶって触れるか触れないかくらいの頬へのキスを受け入れる――はずだった。

 しかし、いつまで待っても頬に感覚がしない。

(……あれ?)

 どうしたのだろうかと目を空けようとした瞬間、柔らかさを感じたのは頬ではなく、唇。

 悠磨に唇をしっかり重ねられているのを脳が理解し、鈴菜は静かに混乱した。

(どういうこと……?)

 やけに長く感じた誓いのキスが終わり、ゆっくり顔が離れていく。

 しゃがみ込みたいのを冷静を装いながらなんとか立ち続ける。きっと顔が赤くなっているだろうが、新婦が感極まっていると受け取られているに違いない。

 涙目で睨みつけるが悠磨は甘い笑顔を湛えたままだ。

 本当に頭にマシュマロ詰め込んだ人になりきっている。鈴菜は頬を熱くしながらたったいま愛を誓った夫の演技力に舌を巻いた。

「もう、鈴菜ったらいつの間にかこんな素敵な人捕まえて!」

「羨ましすぎる! どれだけ徳を積めばこんなカッコイイ人と結婚できるの?」