合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 しっかりした口調に鈴菜は背筋を伸ばす。腹は括ったもののどうしても罪悪感は拭えない。

「悠磨の人生は順調だな。医者になってこうして結婚もできた。それに比べて――」

 悠磨の父が続けようとしたタイミングでひとりの男性が入ってきた。

「失礼します」

「……えっ」

 その姿を見て、鈴菜は目を丸くした。

(マスターがなんでここに?)

 なぜかムーリット・アリーのマスターが立っている。彼には悠磨から事情をすべて説明した上で、ふたりの共通の友人として披露宴に出席してもらう予定だった。ゲストハウスにいること自体不自然ではないのだが、親族控室に来るのはおかしい。

「悠磨の兄、望月純也です。よろしくお願いします」

 スーツ姿のマスター、純也は頭を下げた。

(うそ、マスター、悠磨さんのお兄さんだったの⁉)

 あまりの驚きに鈴菜は言葉が出ない。

「遅いぞ」

 悠磨の父は純也に冷たい声色でたしなめる。

「申し訳ありません」

 純也は低く応えて、少し離れた場所に腰かけた。

(マスター、この前飲みに行ったとき『バッチリふたりの友人役として協力するからね』って言ってくれたのに!)