合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 彼のおかげもありトラブルが起こることなく今日を迎えたが、いよいよとなるとおじけづいてしまう。

「みなさんこうやって緊張するんでしょうか……といっても私は普通の新婦とは違うので緊張の種類が違うのかもしれないですが」

 グローブを付けた両手を胸の前でギュッと握る。すると、悠磨は鈴菜の隣に立った。

「ここまできたらやりきるだけだ。楽しもう」

「なんだか試合に臨むみたいですね」

 落ち着いた様子で声をかけられ、鈴菜は彼を見上げる。ヒールが高い分いつもより顔が近い。

「普通、新郎新婦は頭の中にマシュマロが詰められているくらい浮かれているものなんじゃないか? 俺たちもそれになってやろうじゃないか」

「マシュマロ……ふふ、わかりました。よろしくお願いします」

 おかしな例えについ笑みがこぼれる。

 彼の言う通りだ。ここまできたら最後までやるしかない。今まで数多く見てきた新婦の輝く笑顔を思い出して、最良の日を迎えた花嫁になりきろう。

 悠磨の掌が背中にそっと添えられると、ガチガチになっていた肩から力が抜ける。