合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜は悠磨の時間を極力使わせないように気を配っていた。オンラインでやり取りするスケジュール配分やタスク管理などは的確で、鈴菜は優秀なプランナーであることをうかがわせた。
 一方、実際会って話すと彼女は表情が豊かで感情が出やすい。仲のいい両親のもとで子どものころから存分に愛情を受け真っすぐ育ったのだろう。素直で人が良すぎるから土谷のような男に騙さてしまうのだ。

「残念だな、か」

 先程の自らの言葉を思い出す。なぜあんなことを言ったのか自分でもよくわからない。面倒が減って良かったはずなのに、ウエディングドレス選びに不要とされたのが気に入らなかったのか。

(……余計なことを考えるのはやめだ。俺はきっちり最後まで役目を果たせばいい)

 鈴菜の望みどおり、当日は完璧な新郎役を演じるつもりだ。今のところなんの問題も無い。

 悠磨は病院に続く幹線道路にハンドルを切る。病院が近づくころには悠磨の頭の中は完全に仕事に切り替わっていた。


 
 二月第三週の土曜は澄み切った冬の晴天に恵まれた。

 新郎新婦の控室であるブライズルーム。鈴菜は大きな姿見に映る自分を見ていた。