合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 この披露宴は鈴菜たちが勤めるゲストハウスではなく、系列の中でもとりわけハイグレードなホテルのバンケットルームで行われていた。規模は大きく、招待客は百人をゆうに超えている。

 結婚式から披露宴にいたるまで、この結婚式はパステルカラーのグラデーションが使われていた。

 今日この会場に来てそれに気づいたとき、ただでさえ重かった気持ちがどん底になり、さきほどの新郎のスピーチで地中にめり込んだ。なぜなら、オーロラウェディングのコンセプトを考えたのは鈴菜だったから。

 高砂席に座り笑顔を振りまいている新郎、土谷敦(あつ)彦(ひこ)は職場の同僚だが、鈴菜の元恋人でもあった。