合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「あ、ただ苦手なだけで、大切さも分かっていますしお医者様は心から尊敬してます! 私は一生お世話になりたくないだけで」

 身を乗り出すようにして必死にフォローを試みると、悠磨は突然ハンドルに突っ伏し、肩を小刻みに揺らし始めた。

「あの、悠磨さん?」

「一生お世話になりたくない、ね。医者なんてたしかにそうだ」

 顔を上げた悠磨を見て鈴菜は驚く。彼はこらえきれない様子で笑っていたのだ。これまでの取り繕ったようなものではなく、彼の心が露わになったような笑顔だ。

 どうやら鈴菜の発言が彼のツボにはまったらしい。

(お、大人のイケメンの無邪気な笑顔は反則です……)

「ええと、とにかく黙っていてごめんなさい。ただ、土谷さんにこのこと話した記憶はないので変に突っ込まれないと思います」

 ふいに跳ねた鼓動は気付かなかったふりをして、鈴菜は付け加えた。

「了解。それにしても病院と血が嫌いな新婦と、心臓血管外科医の新郎、か。最高だな」

「どこが最高ですか……ちなみに嫌いじゃなくて苦手なだけですから」

 からかわれて口を尖らせる鈴菜。

「君は本当におもしろいな」

 悠磨は楽しそうにまた肩を揺らした。