合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 その外面に鈴菜は大いに助けられているというわけだ。ホッとした鈴菜は話題を変えことにした。

「これから、病院に戻られるんですよね」

「ああ、君を駅で降ろしたらそのまま向かう」

 悠磨は一日非番なのだが、昨日執刀した患者の容態が気になるらしい。

(前にお父様が悠磨さんのこと『仕事バカ』って言っていたけど、本当に仕事熱心なんだなぁ……)

 すると悠磨は「そういえば」と言葉を落とした。

「俺の衣装は決まったけれど、君の方はこれからなんだろう? 新郎として付き合わなくてもいいのか?」

「はい。悠磨さんが大学病院のお医者様で忙しいのはもう知れ渡ったはずなので、だれもおかしいとは思わないかと」

 忙しい彼を鈴菜の衣装選びにまで付き合わせるのは申し訳ない。別日に璃子や木下に相談しつつひとりで選ぼうと思っていた。今日悠磨が選んだタキシードなら、どんなタイプのドレスでも合わせやすいだろう。

「そうか、残念だな」

「え?」

 独り言のような声が聞こえて、思わず運転席を見る。

「……いや、新郎が新婦のウェディングドレスを見ないまま当日を迎えるのは不自然じゃないのか?」

 彼の横顔に感情の変化は見えない。