合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「でも、悠磨さんには太刀打ちできなかったみたいですよ。実は今日私、初めて婚約者を職場に連れて行くのでかなり緊張していたんですが、他のスタッフたちも完全に信用してくれたみたいでホッとしました」

 この調子なら挙式当日もうまくいきそうな気がして、鈴菜は明るい気持ちで車窓を眺める。

「鈴菜、安心するのは結婚式が終わってからだぞ」

 こちらを見て悠磨は苦笑した。ふたりは婚約者のふりをするとき以外もお互いを名前で呼んでいる。結婚式本番まで時間がない中で自然に呼べるようになるためだ。

「それにしても、悠磨さんって切り替えがすごいんですね。さっきも、すごく性格がいい好青年にしか見えませんでした」

「それだと俺は外面で相手を騙している性格の悪い男だと言っているように聞こえるが」

(まずい、つい口が滑ってしまった!)

「あの、決してそういうことでは」

 慌てて訂正しようとしたが、悠磨は気に障ったわけではなさそうで、むしろ楽しそうに口の端を上げている。

「まぁ、否定しないよ。必要と判断した相手や場面ではそうしてる。物事が円滑に進むからな」

「な、なるほど」