合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜の勢いに璃子は軽く背筋を反らせた。

「ということで、悠磨さんもいいですか?」

「ああ、そうだね。君に任せるよ」

 璃子とのやりとりを不思議そうに見ていた悠磨だったが、すぐに笑顔が返ってきた。

(どうにかごまかせたよね。あぶなかった……)

 鈴菜はこっそり胸を撫でおろした。



「送ってもらってすみません」

「どうせ通りがかりだから構わない」

 衣装合わせを終えた後、乗り換え駅まで送ってくれるというお言葉に甘え、鈴菜は彼の自家用車の助手席におさまっていた。
 国産高級車のセダンは走りが静かでとても乗り心地がいい。

「今日はありがとうございました」

「うまく対応できていたかな」

「バッチリでした。あの人、これで納得してくれるといいんですけど」

「どうだろう。見たところあの男はかなり粘着質で、プライドが高い厄介なタイプだな」

 ハンドルを握りながら顔をしかめる悠磨。さきほどまでの柔らかい物腰が嘘のようだ。