合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 ずっと笑みを湛えていた悠磨の顔がスッと真顔になった。静かな迫力に土谷は目を見開く。

「……失礼しました」

 悔しげに言葉を絞り出し、彼は逃げるようにその場を後にした。どうやら勝負あったようだ。

 悠磨と土谷では格が違いすぎて、いろいろな意味で相手にならない気がした。鈴菜はこっそり溜息をつく。

「もう! あの人なにしに来たんでしょうね。感じ悪い」

 口を尖らしていた璃子は、急になにかに気づいたように悠磨と鈴菜を見た。

「それにして、鈴菜さんの旦那様がお医者さまなんて驚きました。おもしろいっていったら失礼ですけど」

「おもしろい?」

 からかうような璃子の声に鈴菜は首を傾げる。

「だって、鈴菜さん病院嫌――」

(まずい!)

 璃子がなにを言おうとしているか分かって、慌てた鈴菜は被せるように声を上げた。

「私、風邪ひとつ引かない健康体だからお医者さまとの組み合わせがおもしろいのよね! あ、璃子ちゃんやっぱりこのタキシード、悠磨さんに似合ってて最高だし、第一候補で確保したいから今すぐ手続きしていい?」

「え、あ、はい。じゃあ、申し込み手続きしますね」