合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 困ったような顔をする悠磨に鈴菜は小さく笑いかけ、土谷に向き直る。

「土谷さん。ご心配はありがとうございます。でも彼は応際大学医学部付属病院の心臓外科のお医者様で、とても忙しい人なんです。でも、ここに来れなくても、式のことはちゃんと相談に乗ってくれてますから大丈夫です」

 ちょっとわざとらしい言い回しだが、これについてはなにも嘘をついていない。

「ふたりのことなんだから、一緒に考えるのは当然だろう?」

 悠磨は蕩けるような笑顔を向けて、鈴菜の頬を撫でる。

「は、はい……」

 大きな掌の温もりをダイレクトに感じて、思わず声が上ずる。いくら演技とはいえ心臓に悪い。

「……へぇ、とても仲がいいんですね。でも、どうやって知り合ったんですか?」

 土谷はまだ食い下がってくる。

「駅の近くにあるバーだったんです」

(あなたが地味でつまらないと言ったあそこですよ)

 そう心の中で付け加えながら鈴菜は答えた。

「お互い常連で、いつもひとりで飲んでいる彼女が気になっていたのですが、思い切って声をかけたんです。ラッキーなことに彼女はフリーだったので猛アタックしました」

 悠磨は少し照れたように笑う。