合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

『新郎役を完璧にこなしてみせる』と言い切っていただけある。心の中で賞賛を送っていた鈴菜だったが、衣装室の入口に立つ人影に気づきピクリと肩を揺らした。

「鈴菜?」

 悠磨は鈴菜の視線を追う。そこにはこちらの様子をうかがう土谷の姿があった。

「おい、こんなところでサボってないで、仕事に戻ったらどうだ?」

 土谷は集まっていたスタッフたちをじろりと睨む。彼女たちは不満そうな顔をしながらサロンを出て行った

 前にも増して土谷はスタッフたちに嫌われていた。管理職でもないのに上から目線で業務に口を出しているからだ。

 土谷が室内に入ってくるのを見て、木下は逃げるように衣装を片付けに行ってしまい、璃子はあからさまに硬い顔になった。

「この度はおめでとうございます。平松さんの同僚の土谷といいます」

「鈴菜の婚約者の望月です。いつも彼女がお世話になっています」

 悠磨が応えると土谷は値踏みするような視線を向ける。土谷の方が背が引くいので軽く見上げるような状態になった。

「へぇ、ずいぶん立派な新郎を見つけたんだね。タキシードもお似合いだ」