合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜は聞かれるまま自分の置かれた状況を説明し、連絡先を教え今日にいたっていた。

 この二日で鈴菜の頭はだいぶ冷えていた。よく知りもしない人にお願いしていいことではない。それに身元が確かすぎるくらい確かなう悠磨がわざわざこんな面倒な話を受けるメリットがどう考えても見当たらないのだ。

(きっと望月さんは酔った勢いで引っ込みがつかなくなっていただけなんだ。じゃなきゃ、忙しいお医者様が新郎役を買って出るわけがないもの)

 鈴菜は無理やりそう結論付けていた。

「胡散臭い相手と嘘の結婚式なんて、ためらう気持ちもわかるけど」

 箸を置いて笑みを浮かべる悠磨。

「胡散臭いのは私の方です。よく知りもしない女に変に絡まれて引かなかったんですか?」

「よく知らないのはたしかだけど、君のことはあのバーで何度か見かけていたし、どんな仕事をしているかも知っていたよ」

「え……」

「ひとりで飲んでいると、聞くつもりがなくても君とマスターとの会話が聞こえてきてしまってね。よく君は『やっぱり結婚式っていいものです』って話してた」