合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 彼は何度か見かけたことのあるこの店の常連客だ。これまで言葉を交わす機会はなかったし、こうしてしっかり顔を見るのは初めてだった。

(ちょっと待って、この人びっくりするほどかっこいい)

 彼を見上げながら鈴菜は息をのんだ。

 百八十センチはある身長に無駄な肉などついていなさそうな体格。清潔感のある黒髪、切れ長で涼やかな目元、キリリとした眉、高い鼻筋も薄めの唇も男らしい。

 結婚式場のパンフレットやホームページに掲載する新郎役の男性モデル顔負けのかっこよさだ。

「だいぶ酔っているようだが、気分は悪くないか?」

 イケメンは声までよくなる法則でもあるのだろうか。気遣うようなバリトンボイスも心地いい。

「……あ、はい。大丈夫、です」

 生返事をしたものの、整った顔から目が離せない。

(こんなイケメンさんが、新郎役してくれたら最高じゃない? 見た目も声もいい。酔っ払いを心配する優しさがあって人当たりも良さそうだし)

 完全に酔いが回り、判断能力を失った鈴菜の思考はあり得ない方向へ暴走しだした。