合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

(古今東西、八百万の神様に相談したい……どこかにいませんか。新郎として結婚式と披露宴に出てくれて、しばらく結婚したふりをしてくれる演技のうまいかっこいい男の人)

 フワフワとした感覚に任せながら想像を広げていく。

(手堅い職業に就いていて仕事ができてお金持ちで、性格がよくて人当たりのいいイケメンが私のことを好きだってアピールしてくれれば土谷さんを見返せるのにな……って、神様だってこんな図々しい相談されても迷惑だよね)

 天地がひっくり返ってもあり得ない妄想に虚しくなった鈴菜は深い溜息をつき、残った液体を飲み干そうとグラスに手を伸ばしたとき。

「待て」

 低い声が聞こえると同時にグラスが消え、指先が空を掴んだ。

「えっ?」

 ポカンとしながら声の主を探すと、いつのまにか鈴菜の横に長身の男性が立っていた。

「一気飲みは急性アルコール中毒のリスクがある」

「あ……」

「それにペースが速すぎるんじゃないか」

 男性は窘めるような声を出し、グラスをカウンターの上に戻した。