合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

(鈴菜はもうしっかり前を向いているが、あいつは本当にクズ男だったな。なにより鈴菜を不倫に誘ったのが許せない。会社を辞めさせられて離婚されてもまったく同情できない)

 不快なことを思い出してしまったとため息をついていると、廊下の方から不規則な足音が聞こえてきた。

「おはよう、ございます」

 フラフラしながらやってきたのは鈴菜だ。その顔を見た瞬間、悠磨の眉間から皺が消えた。

「おはよう」

 キッチンから出て体を支えてやると恨めしそうな顔で見上げられる。

「腰が立ちません……悠磨さんのせいで」

 予想通りの言葉につい口の端が上がる。

「ごめん。でも、君も大胆だったから」

「だいた……」

 昨日の行為を思い出したのか、ただでさえ赤かった鈴菜の頬がさらに朱に染まる。

「りんごみたいだな」

「もう」

 悠磨が頬をつつくと鈴菜は恥ずかしそうに顔をそらす。その視線ができたばかりの朝食の上で止まる。

「わぁ、今日の目玉焼きもすごくおいしそう。悠磨さんありがとうございます」

「最初に比べたらだいぶましになったか」

「あのときもすごくおいしかったんですよ」