合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜と会う前はまったく必要性を感じなかったのに、こうして進んでキッチンに立っているのだから人は変わるものだ。自分でも驚いているが、鈴菜が喜んでくれると思うとやりがいすら感じている。

 サラダを乗せたプレートに出来上がった目玉焼きを乗せる。もういつかのように焦がすことはない。

(トーストは鈴菜が起きてからでいいな)

 コーヒーを準備するためにキッチンボードからマグカップをふたつ取り出す。グレーと薄いピンクの色違いのマグカップは藤田の結婚式の後、お礼の品として鈴菜に渡されたプレゼントだ。フィンランドの食器メーカーのもので形がシンプルで使いやすくふたりで愛用している。

 それらをコーヒーメーカーの脇に並べながら悠磨は藤田の結婚式での出来事に思い出した。

(鈴菜のあんな表情は二度と見たくない)

 指輪を無くしたことを土谷に責められた鈴菜のつらそうな表情は今思い出しても胸が痛む。元交際相手からの明確な悪意を知り、きっと傷ついただろう。