合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 今ではこの悠磨の部屋が夫婦の寝室だ。お互い相変わらず忙しく、特に悠磨の勤務時間は不規則だ。鈴菜の睡眠の妨げにならないよう、ひとりのときはこれまでのように私室で寝てはどうかと提案したが『私、眠り深いですし、寝ているときも悠磨さんの近くにいたいです』と言って必ずこのベッドで寝てくれている。

 妻の頬に触れるだけのキスを落とすが、やはり疲れているのか一向に起きる気配はない。

(目が覚めたら「悠磨さんのせいで腰が立ちません」って赤い顔で睨まれそうだな)

 想像しただけでかわいいと思ってしまうのだから、だいぶ妻に骨抜きにされている。

 満足するまで寝顔を眺め、悠磨は静かにベッドを出た。

 シャワーを浴び部屋着に着替えた後、キッチンに向かう。冷蔵庫から卵とベーコンを取り出しフライパンを温め手早く油をひく。

 初めは無残の出来だった目玉焼きだが、あれから何度か鈴菜の指導を受けまともに作れるようになった。時間があるときはこうして妻に代わって朝食の準備をする。