合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 自分たちの出会いも、お互いを大切に思えるようになったのも、とんでもない奇跡の積み重ねだった。この幸運をずっと大事にしていきたい。

「悠磨さんに会えて……好きになって、結婚できてよかった」

 グラスの中でキラキラと揺れるすみれ色をうっとり見つめ、鈴菜は幸せのため息をついた。

 一瞬の静寂の後、隣でグラスを無造作に置く気配を感じて鈴菜は我に返る。

(ちょっと待って私、ずいぶんと恥ずかしい発言をしたのでは?)

 心地よい酔いと場の雰囲気に流されてしまった。
 まごうことなき本心ではあるけれど、重くて悠磨に引かれたのではないだろうか。

 恐る恐る悠磨の表情を確認するが、案の定、困惑しなにかをこらえているかのような複雑な表情をしている。

「あっあの……」

 どうやって弁明したらいいかわからず羞恥に身を縮ませていると、突然悠磨の口角が上がった。

「鈴菜、これ飲んだら帰ろうか」

「えっ? もうですか」

 鈴菜は目を丸くする。まだ二杯目を飲み始めたばかりだし、せっかくだからもう一杯くらい飲みたかったのに。しかし、無駄に色気を出さなくてもと言いたくなるような艶やかな笑顔に見惚れ、言葉を続けられない。