合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「そう。ただ、〝できない相談〟とか〝叶わぬ恋〟みたいなネガティブな言葉だけじゃなくて〝奇跡の予感〟や〝完全なる愛〟っていうロマンティックな意味もあるんだ」

「そうだったんですか」

「奇跡的にここで出会って、今は完全なる愛を成就させた。今のふたりにぴったりだろう?」

 満足げにうなずく純也。悠磨は「キザだな」と苦笑しつつグラスを手に取った。

「ありがとうございます。いただきます」

 鈴菜は純也にお礼を言ってからグラスを悠磨と向け合った。ゆっくり口に運ぶとリキュールのフローラルな香りとレモンの爽やかさが同時に広がり、鈴菜は目を細める。

(相変わらずおいしい……)

 でも、今日のブルームーンが今までで一番おいしい気がする。それは大切な人と一緒に味わっているからだろう。

「たしかにこのお店が無かったら悠磨さんと出会うこともなかったんですね。マスターに感謝しなきゃ」

 グラスを置き独り言のように呟く。そもそもこの店を見つけたのは偶然だったし、居心地のいい場所だからこそ通い続け悠磨と出会えた。