合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 コンテスト受賞の表彰式があったのは三日前。金賞受賞者の鈴菜は来月からチーフに昇進することになった。支配人や璃子を始め多くの同僚たちが祝ってくれた。

「ずっとがんばってたもんね。おめでとう」

 純也は目を細めた。顔の作りも纏う雰囲気もまったく似ていない兄弟だと思っていたが、こうして見ると穏やかな笑顔は悠磨と少し似ている気がした。

「ありがとうございます。希望次第で好きな施設に異動も可能なんですが、しばらくは今のところでチーフとして仕事を勉強したいと思ってます」

 大きいホテルで豪華な式を次々とプロデュースするのも魅力的だけれど、メゾン・ド・リュネのようなゲストハウスでじっくりお客様に向き合っていく方が自分に合っているかもしれない。

「鈴菜が望むようにしたらいい。どんな選択をしても俺は応援するから」

「悠磨さん……」

「仲が良くて結構なんだけど、弟のデレデレした顔はお兄ちゃんとしてはこそばゆい」

 純也の呆れた声に鈴菜はハッとする。いつの間にかふたりで見つめ合ってしまっていたようだ。

(気が緩んでた。マスターの前で恥ずかしい)