合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 さらにシステムのログなどから鈴菜の打ち合わせスケジュールや業者に発注するデータを勝手に書き換えた証拠も出てきたのだ。一時期重なっていた鈴菜のミスはすべて土谷によるものだったらしい。

(プランナー以前に人としてありえない)

 あれから一度も出社することなく土谷は懲戒解雇になった。義父や妻にも見限られ離婚は避けられないと聞いたが同情できなかった。

 自分に明確に向けられた悪意を思い出し、小さくため息をついていると背中に大きな掌が添えられる。

「君は一ミリも悪くないし、気に病むことはない」

「悠磨さん」

 悠磨は真剣な表情でこちらを見ていた。背中からは優しくて心強い温かさがじんわり伝わってくる。

(土谷さんに追い詰められたときも悠磨さんはこうやって背中を支えて、前を向かせてくれた)

 もうくよくよしない。彼が言う通り自分は悪くないのだから。

「はい。もう嫌なことは忘れてがんばります。今回のコンテストで自信もつきましたし」

 鈴菜は素直にうなずく。