合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 思い切り睨みつけると、土谷は一瞬驚いた顔をしたもののすぐに薄い笑みを浮かべた。

「へぇ、お前が結婚か。驚いたな。相手はどんな男なんだ?」

「あ、あなたなんかよりとても素敵な人よ。早く結婚したいから式の日程だって検討してるんだから」

「だったら式場も決めてるのか? お前のことだから、スタッフみんなに祝ってもらえるここでやるって考えてそうだけど」

「そ、そうね、やるならうちがいいと思ってる」

「だったら支配人には相談済みなのか?」

 どんどん畳みかけられ、勢いを失っていく鈴菜。

「それはまだ……」

「あぁ、平松さんここにいたんですか」

 そのときオフィスの扉が開き、鈴菜は驚いて肩を揺らす。

「し、支配人」

 入ってきたのはこのゲストハウスの支配人。五十代前半の恰幅のいい男性でスーツ姿も貫禄がある。温厚で紳士的な性格でお客様からも従業員からも人望があり、入社当時から鈴菜を娘のようにかわいがってくれている。

「来月のブライダルフェアの件なんですが……あれ、なにかああったんですか?」

 鈴菜と土谷のただならない雰囲気に気づいたのか、支配人は訝しげな顔になる。

「あ、いえ……」