合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 『君はプロだろう? こういうときこそ、冷静になれ』と声をかけられ、鈴菜はまずなにをしなければならないか気づけた。そのおかげですぐに土谷の所業が明らかになったのだ。

「偶然君の姿が見えて、声をかけようと思って近づいたら泣き出しそうな顔をしていたから驚いたよ」

「情けないところを見せてしまいましたね」

 コーヒーカップを置いて鈴菜は小さく肩をすくめる。

「でも、君は落ち着いて行動して指輪を見つけ、式でも披露宴でも完璧な動きをしていた。働く君の表情は凛としていて目が離せなかった」

 悠磨は横から覗き込むようにして鈴菜の髪に手を伸ばした。鎖骨にかかる髪を弄ばれるとどうも落ち着かない。

「あ、ありがとうございます。私も前、病院で悠磨さんの白衣姿を見てかっこいいって思ったんですよ」

「そうだったのか」

 悠磨の指先が止まる。

「はい。苦手なはずなのに、あんなに素敵に見えたのは自覚していなかっただけで、あの頃はもう悠磨さんのこと――」

 そこまで言って鈴菜は口を噤んだ。

(ちょっとまって私、なんで余計なことまで口を滑らせそうになってるの)