合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 たしかに模擬結婚式用に指輪はいくつか準備してある。でも、ふたりがこだわりを持って作り、初めて着けるのは指輪の交換のときがいいと言って楽しみにしていたのに、その場しのぎの指輪になってしまうなんて。

(ふたりの一生に一度の思い出に傷がついてしまう……私のせいだ)

 張り裂けそうな胸の上でギュッと手を握ったとき。

「最低だな、お客様から預かったものを無くすなんて」

「……土谷さん」

 騒ぎを聞きつけたのか、いつの間にか土谷が立っていた。

「どう考えてもプランナー失格だ。このまま見つからなかったらどう責任を取るつもりなんだ。取れないだろう。それだけのことをしたんじゃないのか」

 蔑むような表情で次々に鋭い言葉を投げられるが、なにも返すことができない。

「コンテストで金賞を取ったから天狗になってたんだよ。こんなミス侵すようなプランナーは受賞の資格はない。辞退しろ」

 支配人も璃子も周りのスタッフたちも土谷の声の勢いにのまれたように黙ってしまった。

(こんな失態、本当にプランナー失格だ)