合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜は震える足を動かしながら会場に戻る。蒼白になっていたのだろう。鈴菜の顔を見た璃子は目を丸くする。

「鈴菜さん、なにかあったんですか?」

「藤田様にお預かりした結婚指輪がないの」

「指輪が?」

 璃子の顔が一瞬で強張った。

「朝、間違いなく金庫に入れたはずなのに」

 わけがわからない。でも、現実、消えてしまったのだ。

「とりあえず、もう一度一緒に見てみましょう」

 璃子と一緒に保管庫に戻り確認するが、やはりどこにもない。心臓が不規則に鳴り続ける。

「他のスタッフに心当たりがないか聞いてみる」

 鈴菜がオフィスエリアへ向かおうとした時だった、ちょうどそこに何人かのスタッフと共に支配人が立っているのを見つける。駆け寄って事情を説明すると、全員の顔色が変わった。

「――各部署のチーフに連絡を取る」

 支配人はその場で電話をしてくれたが、情報を得られない。そうこうしているうちに刻々と挙式の時間が迫っていた。

「申し訳ありません。私の不注意です」

「今はとにかく手が空いているスタッフ総出で探そう。十分で見つからなかったら、お詫びをして今日は仮の指輪で結婚式を挙げていただくしかない」