合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 彼は今日藤田の友人として列席する予定だ。朝、悠磨に『後で行くから。君の仕事ぶり楽しみにしている』と見送られたのだが、なんだか変に緊張する。

 ここからは挙式に向けて最後の準備だ。藤田から預かったふたりの結婚指輪をリングピローにセットし、挙式会場に持ち込む。

(藤田様も、小林様のかわいらしいドレス姿に、頬がゆるみっぱなしだったわね)

 お互いの晴れ姿に照れ合うふたりを微笑ましく思い出しながら、鈴菜は保管庫に入った。ここはお客様からお預かりしたものを一時的に保管しておく場所で、貴重品は奥にある金庫にしまってある。もちろん指輪は金庫の中だ。

 テンキーを押して扉を開き、鈴菜は絶句する。

(……指輪がない?)

 金庫の中は空で、中に入れたはずのリングケースがどこにも見当たらない。保管庫内に落ちていないか慌てて確認するが、どこにも見当たらない。

 サーっという音とともに血の気が引く。

 他のスタッフが間違えて持ち出したのだろうか。しかし、今日の挙式は一件だけだし、貴重品を持ち出しする場合は必ず記載がすることになっている管理表にもなにも書かれていない。