合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

(べ、別にそういうことが無いからって物足りないとか寂しいなんて全然思っていないけど……!)

 誰にするでもない言い訳を心の中で並べ立てる。

 悠磨が自分を愛してくれているのはちゃんと実感できている。しかも仕事は順調で、今週末は瑞穂と藤田の結婚式だ。予定通り瑞穂の祖母、そして悠磨も出席する。

 さらに今月半ばにはコンテストの授賞式も控えていた。遅まきながら悠磨に受賞のことを伝えたら、もっと早く知りたかったといいつつとても喜んでくれた。

 ここまでくるのにいろいろあったけれど、なにもかも順調にいっている。

「うん、今日も頑張ろう!」

 鈴菜は笑顔を浮かべ、出勤の支度をするために部屋に戻った。
 
***

 悠磨が朝の回診を終え医局に戻ろうとしていると、前方を見知った後姿が歩いていた。

「増田先生、おはようございます」

「ああ、おはよー」

 追いかけて声をかけると増田は振り返り立ち止まった。どうやら彼も回診を終え戻るところのようで当直だったのか少し眠そうだ。

「先日は、いろいろありがとうございました」

「いや、あんなの大したことないよ」

 並びながら礼を言うと増田はニコニコと笑う。