合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜は病院で日村に悠磨との関係をにおわされた話や、電話がかかってきたことを包み隠さず説明する。

「そんなことを言われていたのか」

 悠磨は不快感をあらわにしている。ずっと黙っていたのだから怒って当然だ。

「ごめんなさい。すぐに話していれば悠磨さんは今日みたいなことに巻き込まれなくて済んだのに」

 鈴菜は俯き、声を絞り出した。

「怖くて聞けなかったんです。本当に悠磨さんに愛人がいたらどうしようって……だって、私」

 あなたを好きになってしまったから。続けようとした言葉は悠磨に手を握られて阻まれる。顔を上げると端整な顔がこちらを見つめていた。

「君に怒ってるわけじゃない。君ひとりに抱えさせてしまった俺自身に腹を立てている。俺の方こそ早く伝えればよかったんだ」

「悠磨さん?」

「さっき彼女に言ったのは本心だ。俺は君を裏切るようなことは絶対にしない」

 そこで一度悠磨は言葉を切り、握る手に力を込めた。

「君を愛してる」

 静かなリビングに悠磨の声が落ちた刹那、鈴菜の思考が止まった。