合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「直前まで君に不調は見られなかったし、ひとりになったタイミングで声をかけてくるなんて明らかにおかしいから、近くにいた増田先生にさりげなく目配せしておいたんだ」

 実はここ最近日村にアプローチされていた悠磨は『どうやったら面倒事を避けられますか』と増田に相談していたらしい。なんでも増田はそういった〝面倒事〟に詳しいらしい。

(パーティで『先生の相談に乗ってあげてるのに』って増田先生が言っていたのは日村さんの話だったんだ)

「部屋に入ったら案の定君はいなかったし、彼女に抱き着かれて関係を迫られた。わざわざパーティ会場の控室を選んだのは、受け入れなければ騒いで人を呼ぶと脅すつもりだったんだろうな」

 うんざりした顔で悠磨は溜息をついた。悠磨は『ふたりきりになるときは忘れないように』と増田にアドバイスされていたようにスマートフォンの録音機能を作動させていた。万が一日村が根も葉もないことで騒ぎ立てた場合、証拠にするためだ。

 だから増田はあえてある程度ふたりにしゃべらせてから部屋に入ったというわけだ。

「彼女は有能で真面目な看護師だと思っていたのに、残念だ」