合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「悔しかったんです。先生をずっと支えていたのは私だし、先生だって私を特別だと思っていたはずですよね。それなのに、先生の価値がわからない女が突然妻なんて、納得いきません!」

 悠磨は今度こそ日村の腕を引きはがし、無言で彼女を見おろした。

 ドアの外から見ている鈴菜もゾッとするような軽蔑の視線だ。

「……怖ぁ」

 すぐ後ろから呟く声がして心臓が跳ねる。振り向くとそこには増田が立ってた。目を丸くする鈴菜に向かって彼は人差し指を立て唇に当てて見せた。「もう少しこのまま静かにしていて」という意味のようだ。

 混乱しながらも、もう一度室内に目を向ける。

「君には失望したよ。君をオペ看に指名していたのはあくまで君の働きを評価していたにすぎない。それで勘違いされたら迷惑でしかない」

 悠磨は先ほどまで縋り付かれていた腕を手で払った。

「せ、先生……?」

「ドクターに色目を使う看護師とは仕事はできない。このことは上に報告させてもらう」

 職場の彼だったら絶対にしないであろう冷たい言動を目の当たりにして、日村は顔色を失った。

「そ、それなら私だって先生に無理やり関係を迫られたって訴えますから!」