合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「待ってください!」

 今度は悠磨の腕に取りすがる日村。

「私、ずっと望月先生のことが好きだったんです」

 必死な声の日村に対して、悠磨は皮肉な笑みを浮かべた。

「だから、妻と別れて自分と付き合えと言ったんですか」

「愛人でも構いません。看護師と男女関係のある既婚のドクターなんて何人もいるじゃないですか。望月先生ほど優秀で将来性のあるドクターなら誰も文句は言いませんよ」

「話にならない」

 大きな溜息をついて悠磨は日村を再び振り払おうとしたが、彼女はさらに縋りついた。

「奥さんだったら大丈夫です。もう私たちの関係を認めてくれますよ」

「……どういうことだ」

 悠磨の声が突然低くなった。

「奥さんに私が先生の愛人だってほのめかしたんです。それなのに先生が私になにも言ってこなかったのは、なにも言われていないからですよね。だから、あの人は先生に愛人がいても構わないし、あの人にもきっと愛人が――」

「まさか、鈴菜にそんな嘘をついたのか」