合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 きょろきょろと周りを見回すが、ほとんどの招待客は会場内にいてこの辺りに人影はない。でも、たしかにし女性の声が悠磨を呼んでいるように聞こえた。

 どうしても気になった鈴菜は声がした方へ足を進めた。近くの角に入るとそこには控室と思われる部屋がいくつか並んでいた。

 手前の控室は少し扉が開いていて、覗いた鈴菜は中の光景を見て息をのんだ。

 さほど広くない部屋の奥に悠磨がいた。そして彼の胸に抱き着いているのはスーツ姿の女性だった。

(日村さん?)

 一度しか会ったことはないが、整った横顔は彼女のもの。いつの間にか会場に来ていたようだ。

 悠磨の胸におさまる日村を見て鈴菜の足は床に張り付いたように止まり、心臓はザワザワと嫌な音を立てた。

(やっぱりふたりは本当にそういう関係だったの……?)

 絶望に心が覆われそうになった次の瞬間、悠磨は無造作に日村を引きはがした。

「妻がここで休んでいると聞いたから来たんですが。彼女がいないなら戻ります」

 やけに平坦な声はまったく動揺が感じられない。

(いったい、どういう状況なの?)

 鈴菜は固まったまま彼らを注視するしかできない。