合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「瀬戸はたしか去年結婚したよな。今日奥さんはどうしたんだ」

 悠磨の質問に瀬戸は優しげな顔を綻ばせた。

「実は、今五か月でして。体調はいいのですが、僕が心配なので家で待ってもらっています」

「そうなんですか、おめでとうございます!」

 明るい話に目を輝かせると、瀬戸は「ありがとうございます」と目尻を下げる。きっと彼は妻のことを深く愛しているのだろう。幸せそうな表情に彼ら夫婦が少しだけ羨ましくなる。

「大学では勉強ばかり、医師になってからは仕事優先の瀬戸が結婚した上に父親になるとは」

「そっくりお返ししますよ。僕より仕事人間の先輩が結婚するとは思いませんでしたよ。でも、奥さんといい出会いをしたんですね」

「そうだな」

 悠磨は当然のように応える。笑顔で語り合うふたりは、なんとなく同じタイプの人間に見えた。

(いい出会い、か。悠磨さんが本当にそう思ってくれていたらいいな)

 ふたりの会話に耳を傾けながら鈴菜の胸は切なくなる。