合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 驚いて見上げた先には悠磨の笑顔があった。しかし、なぜか目は笑っていない。

「増田先生、お疲れさまです」

 明るい口調だが、鈴菜の腰はしっかり抱いたままだ。病院で会ったときもまったく同じようなことがあったような。

「わ、もしかして僕すごく警戒されてる? 大丈夫だよ。鈴菜ちゃんはかわいくてすごくタイプだけど、今まで人妻に手を出したことはないから」

「これからもそうしてください」

「冷たいな。最近は先生の相談に乗ってあげてるのに」

 含みを持たせた増田に悠磨の眉間にかすかに皺が寄った。

「それとこれとは別ですから」

「この前も思ったけど望月先生って奥さんが絡むとキャラ変わって面白いね。いつもの爽やかイケメンドクターは完璧すぎて隙が無いけど、人間らしくて親しみが持てる。やっぱり人って結婚すると変わるんだな」

「だったら増田先生も早く結婚してはいかがですか。きっと引く手あまたですよ」

(悠磨さんどうしたんだろう。増田先生は冗談を言っているだけなのに)

 棘のある言い方に、いつもの外面が剥がれかけていると察した鈴菜は慌てて悠磨を見上げた。