合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 アイランドキッチンから声がして鈴菜は目を丸くした。スウェット姿の悠磨がコンロの前に立っている。それだけでも珍しいのだが、片手にはフライパンを持っているではないか。

「いったい、なにがあったんですか?」

「実は目玉焼きを作ろうと思っていたんだが……」

 悠磨は手元に視線を落とす。近づいてフライパンの中を覗くと目玉焼きと思われるものが焦げてこびりついていた。臭いの正体はこれだったらしい。

 信じられない気持ちでダイニングテーブルに視線をやる。そこにはいつも使っている皿が置かれていて無造作に千切られたレタスが乗っている。

「いつも、君がやってくれているように朝食を準備しておこうと思ったんだ。目玉焼きくらい簡単にできると思っていたのに、案外難しいんだな」

 たしかに、なんでも器用にこなしそうな悠磨が作ったとは思えない出来だった。声を失っていると悠磨はバツの悪い顔になった。

「笑いたければ笑えばいい」

「ぷっ……こ、焦がすって」

 我慢できずに吹き出した鈴菜を見て悠磨は「本当に笑うのか」と口を尖らせている。

(目玉焼きの出来も、拗ねた顔もいつもとのギャップがありすぎて)