合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「ありがとうございます。当館の料理は見た目も味もかなりこだわっていて好評いただいておりまして、おふたりのこだわりやアイディアを取り入れたオリジナルメニューも対応できますし、ビュッフェスタイルのデザートも人気ですよ」

 鈴菜はウエディングサロンの打合せコーナーでカップルにプランを説明する。

 ウエディングプランナーは清潔かつ落ち着いた印象が大切だ。鈴菜は今日も黒いパンツスーツの制服に身を包み、髪は後ろでしっかり結んでいる。メイクは派手すぎず、かつ薄すぎないように。指先にも気を抜かず、爪は短く切りそろえベージュのマニキュアで艶を出している。

「デザートビュッフェ、楽しそう!」

 女性が目を輝かせると男性も「いいね」と笑顔で同調する。

「来月のブライダルフェアではメイン料理とデザートビュッフェの試食もできますので、是非ご来館ください」

 鈴菜は若いふたりに柔らかく笑いかけた。

 鈴菜が勤めるここゲストハウスメゾン・ド・リュネは結婚式専用の施設だ。都心の駅から歩いて五分の立地にありながら、大通りから一本入ったところあるため都会の喧騒を感じない。