合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 スヤスヤと眠る愛おしい存在に心の中で語りかける。

 あの後お互い多忙になり、ゆっくり話せていない。さらにこの数日彼女は取り憑かれたように忙しくしている。

(こんなところで寝落ちするくらい疲れているのか)

 かつて自分はソファーで寝起きするのが当たり前だった。それが普通でないと教えてくれたのも鈴菜だ。

 悠磨は鈴菜の体の下に腕を差し入れ静かに抱き上げた。その重みや体温を心地よく感じながら、部屋まで運んでいく。

 初めて足を踏み入れる鈴菜の部屋はきちんと整理されており、ブライダル雑誌やフラワーコーディネイトなど、仕事に関する本が並んでいた。

 起こさないように注意しながらそっとベッドに横たえる。鈴菜は「うーん」と鼻にかかった声を出しながらまた丸くなった。
(本当に猫みたいだな)

 悠磨は笑いをこらえながら丁寧に布団をかける。

「おやすみ鈴菜。ゆっくり休んで」

 悠磨はもう一度鈴菜の髪を撫で、額に触れるだけのキスをした。


***


「ん……」

 重い瞼を上げると、カーテンの隙間から朝の光が差し込んでいた。

(あれ、私いつの間にベッドに入ったんだっけ)