合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜と出会ってからはどんどん息がしやすくなり、以前に増して仕事に集中できるようになった。彼女が悠磨の生活をまともにしてくれたのもあるが、存在そのものが悠磨を支えてくれているのだ。

 鈴菜が愛おしい。誰にも渡したくない。人生をかけて大事にしたい。初めて女性に対して抱いた強い気持ちだった。

 しかし、鈴菜は悩みを尋ねても、頼ってほしいと伝えても大丈夫だと笑って拒絶する。

『おかげさまで今日はいい気分転換になりました。まるでデートみたいで楽しかったです。いい思い出になりました』

 明るく話す鈴菜を前に悠磨は焦燥感にかられた。

 鈴菜は離婚の日が来たら同じように「お世話になりました」と微笑んであっさり家を出て行くのだろう。

 胸が詰まるような気持ちで悠磨は彼女の髪に手を伸ばし、そのまま唇を奪った。結婚式の誓いのキスとは違う執着を滲ませたキスに彼女が応じてくれたと感じたのは思いあがりだろうが。

――鈴菜、俺は、この先もずっと君と夫婦でいたい。

 その言葉は日村からの電話で遮られ、伝えることはかなわなかった。

(近いうちに必ず伝える。受け入れてもらうから)