合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 
 時刻はもうすぐ二十時。一日の仕事を終え医局を出た悠磨は更衣室に向かった。速足になっているのはすぐに着替えて家に帰りたいからだ。

(鈴菜はもう帰っているだろうか)

 ここ最近鈴菜は目に見えて疲れている。悠磨も変則的に働いているからすべてを把握できているわけではないが、担当する結婚式のある日は朝方に起きて出て行くし、残業も多いようだ。

 食事の準備はいらないと何度言っても、彼女は受け入れない。きっと今日も夕食の準備をするつもりだろう。

(無理をしないで休んでほしいんだが。まったく鈴菜は頑固だな)

 どの口が、と言われるかもしれないが心配なものは心配だ。

 悠磨の食生活が気がかりなら、ハウスキーパーの契約に調理も追加すればいい。鈴菜の作る料理が食べられなくなるのは正直残念だが、彼女が体調を崩すよりは何倍もましだ。

 そんなことを考えながら手早く着替えを終え、更衣室を出てすぐ。

「望月先生、お疲れさまです」

 声を掛けられ振り向いた先には私服姿の日村が立っていた。

「お疲れさまです。日村さんも今から退勤ですか」

 外面を張り付けて笑顔を向けると、日村はこちらに近づいてきた。