合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 不倫の誘いを断って以来、土谷は絡んでこなくなった。鈴菜がコンテストで金賞を受賞したあとは恨めしそうに睨んできたが、なにか言ってはこない。それは大いに結構なのだが、彼は大事な打ち合わせに遅刻したと思えば、高額なプランを強引に売りつけようとするなどお客様からの評判がますます悪くなっていた。

 担当を変えてほしいというクレームが相次いで入り、支配人は彼から大半の案件を取り上げ他のプランナーに振り分けた。結果、鈴菜や璃子にもその分が回ってきていて、それが今の忙しさの一因ともなっている。現に今ミスが分かった招待状の依頼主も元々土谷のお客様だった。

 温厚な支配人も堪忍袋の緒が切れたようで厳しく注意したそうだが、『男のプランナーだから差別されている。本社に訴える』と反省する様子はなかったそうだ。

「まったく、いい迷惑ですよね」

 璃子は呆れたように溜息をつく。

「そうなんだけど、なんにしてもミスは許されないものね。しっかりチェックするわ」

 鈴菜は背筋を伸ばしパソコンに向き直った。


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