合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 深いため息が足元に落ちたとき、玄関のドアが開く気配した。ハッとした鈴菜は両手で自分の頬を軽くたたき玄関に向かう。

「おかえりなさい」

 靴を脱いだ悠磨に笑顔を作る。彼は「ただいま」と言ったあとじっとこちらを見た。

「鈴菜、どうしたんだ。顔色が悪い」

「え、そうですか? なんともないですよ」

 どうやら気持ちを切り替えきれていなかったようだ。大げさに首を横に振り否定する。

「それよりすぐにご飯作りますから」

「体調が悪いなら無理して夕食は作らなくていい」

「元気ありますし、悠磨さんの方が疲れてるんですから栄養つけないと! 私もお腹空いたから簡単なものになっちゃいますけどパパっと作りますね。あ、その間にお風呂入っちゃってください」

「……わかった」

 一気にまくしたてた鈴菜になにか言いたげにしながらも悠磨はバスルームに向かった。彼を見送りキッチンに戻った鈴菜は、冷蔵庫の前で「ふう」と小さく息をついた。

(そうよ。ちゃんと割り切らなきゃ)