合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 これまでの苦労が一気に報われた気がする。胸を一杯にしながら声を出すと、周囲から拍手が起きオフィス内はさらにお祝いムードに包まれた。

 
 夕刻、仕事を終え帰宅する。あの後も忙しく業務をこなし体はヘトヘトだが、気分は高揚している。

(本当に受賞できたなんて、嘘みたい)

 支配人の話では鈴菜の受賞は週明けに正式に社内広報で発表され、本社での授賞式は来月の予定らしい。

 軽い足取りでキッチンに向かい帰りがけに買ってきた食材を冷蔵庫に入れる。ついいつもよりいい食材や、デザートまで手を伸ばしてしまった。まだ悠磨は帰宅していないが、鈴菜は誰よりも彼に受賞のことを伝えたかった。

 きっと悠磨なら一緒に喜んでくれる。

(悠磨さんがいいならノンアルコールビールで一緒に乾杯しちゃおうかな)

 時刻はそろそろ二十時になる。ちょうど職場を出る前悠磨から【やっと落ち着いたから今日は早めに帰る】というメッセージを受けていたから、久しぶりにふたりでゆっくり食事をとれるかもしれない。

 とりあえず夕食を作ろうとエプロンをつけたとき、静かな部屋に電話の音が響いた。

「わ、電話」