合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 
 瑞穂と藤田を見送った後、鈴菜は職員用化粧室に足を向ける。三十分後にもう一件来客の予定があるので身だしなみをチェックするためだ。

 鏡を覗くと代わり映えのしないいつもの自分がいたが、心なしか疲れているようにも見えた。

 悠磨とショッピングに出かけてから約一週間。鈴菜は多忙な日々を送っていた。

 ありがたいことに、鈴菜の評判が口コミで広がり指名を受ける機会が前にも増して多くなったのだ。

 メゾン・ド・リュネでは基本的に新規客の対応から挙式のサポートまでひとりのプランナーが専属で行う。業務内容は見積書の作成や発注、今日のような席次表の作成対応まで多岐にわたる。
 どれも大切な仕事でミスは許されないので、仕事中はずっと気を張っている。

 一方悠磨の方も忙しい。あのとき日村からかかってきた電話は、悠磨の同僚の医師がプライベートで怪我をして出勤できなくなったという連絡だったらしい。その穴を埋めるべく悠磨が駆り出され、病院に詰める時間が増えた。

 すれ違いのような日々が続いているが、この状況は鈴菜にとってありがたかった。

 ふたりの関係性はあれからなにも変わっていない。