合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 〝日村〟という響きに、鈴菜の胸はザワリと音を立てる。

「はい、そうですか。わかりました、とりあえずそちらにフォローに向かいます。今、外なので少し時間がかかりますので先に――」

 日村に指示を出す悠磨の声を聞くともなしに聞きながら、鈴菜は海辺に映る夜景に目を逸らす。

「すまない、病院から呼び出しが入った」

 電話を切った悠磨の顔からは、先ほどまでの揺らぎは一切見えなかった。

「すぐに戻らないと」

 鈴菜はうなずき、悠磨に先立つようにして車に向かう。

 去り際に目に映ったビルの明かりは、もうきらめいてはいなかった。