合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 だめだと思うのに、動けなかった。

「……ん」

 鈴菜は目を閉じてそれを受け入れた。柔らかな彼の唇を感じるのは結婚式ので誓いのキス以来。

 しかし、あのときと違って彼はすぐに離れようとしない。

「鈴菜……」

 彼は顔の角度を変えながら口づけをやめない。吐息とともに漏れ出る声が愛しい名を呼んでいるようで、脳が芯から蕩けそうだ。なりふり構わず彼を求めたくなる。

 しかし、わずかに残った理性がストップをかけた。

(こんなことしちゃダメだ)

 縋りつきそうになった腕で彼の胸を押すと、唇が離れた。

「なんで……」

 キスなんてしたんですかと聞きたいのに、甘んじて受け入れてしまった自分を責める気持ちもごっちゃになって、言葉が出てこない。

 鈴菜の肩に手を置いた悠磨の瞳は揺れていて、いつもの余裕を失っているように見えた。

「鈴菜、俺は――」

 そのとき、突然スマートフォンが振動した。彼のジャケットのポケットからだ。張り詰めていた空気は一気に霧消する。

 鈴菜を切なげに見つめたのは一瞬。悠磨はすぐに肩から手を外しスマートフォンを取り出した。

「――はい。望月です。日村さん、どうしましたか」